Takahiro Kuromori
Morphoeffect
目に映るものが全てでははない。
それでも目の前にある幸せを信じてみようと思う。
僕には丸2年付き合っていた彼女がいた。なぜ過去形なのかというと、半年ほど前に振られてしまったからだ。今までは縁遠かったバレンタインの日にはチョコをあげるし、誕生日は毎年お祝いするよと言ってくれた。それなのに、終わるときは呆気なかった。自分に至らないところが沢山あったから仕方がないんだけれど。
振られてからというものの、幸せそうにしているカップルや夫婦を見かけると、いわゆる”リア充爆発しろ”なんていう嫉妬心丸出しの感情を抱いていた。
ふとした瞬間に、彼女のことを思い出す。その度に忘れることができない自分に嫌気がさして。あなたのことを思い出さなくなったと思ったら急に夢に出てきてしまう。その度にあなたを幸せにできなかった自分のことが嫌いになる。そんな気持ちを紛らわすために、馴染みの洋品店や大好きなバーへ何度も足を運んでしまう。
これまで通りの生活も、楽しくて幸せだったと思う。けれど、その生活をしていては出会えなかったであろう人と何人も出会うことができた。そういう出会いを重ねるうちに、幸せそうなカップルや夫婦を見かけても嫉妬する気持ちは薄れていった。その代わりに純粋に羨ましく思うようになっていった。
その幸せそうに手を繫ぐカップルや夫婦が本当に幸せなのかは分からない。だけれど、何かが違えば出会うことも手を繫ぐこともできなかったかもしれない。そう思うと赤の他人のことなのに、その幸せが続くよう願ってしまう。せっかく繋ぐことができたのだから。
少しの羨ましさと、大きな願いを込めて。
2021年2月 栗森貴大
栗森貴大/Takahiro Kurimori
http://komagallery.com
神奈川県出身、日本写真芸術専門学校卒業
専門学校生卒業後、会社勤めの傍ら、生まれ育った横浜市北部を被写体に作品制作を続ける